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平成31年(2019年)版 源泉徴収のあらまし


源泉徴収制度について

Ⅰ 源泉徴収制度の意義
 所得税は、所得者自身が、その年の所得金額とこれに対する税額を計算し、これらを自主的に申告して納付する、いわゆる「申告納税制度」が建前とされていますが、これと併せて特定の所得については、その所得の支払の際に支払者が所得税を徴収して納付する源泉徴収制度が採用されています。
 この源泉徴収制度は、①給与や利子、配当、税理士報酬などの所得を支払う者が、②その所得を支払う際に所定の方法により所得税額を計算し、③支払金額からその所得税額を差し引いて国に納付するというものです。
 また、復興特別所得税においても、平成25年1月1日から平成49年(2037年)12月31日までの間に生じる所得のうち、所得税の源泉徴収の対象とされている所得については、所得税を徴収する際に、復興特別所得税を併せて徴収し、徴収した所得税と併せて納付する源泉徴収制度が採用されています。
 この源泉徴収制度により徴収された所得税及び復興特別所得税の額は、源泉分離課税とされる利子所得などを除き、例えば、報酬・料金等に対する源泉徴収税額については確定申告により、また、給与に対する源泉徴収税額については、通常は年末調整という手続を通じて、精算される仕組みになっています。
 この源泉徴収制度は、我が国においては、利子所得については明治32年から、給与所得については昭和15年から採用されているなど長い歴史を有しており、外国においても多くの国で採用されています。
Ⅱ 源泉徴収義務者
 源泉徴収制度においては、源泉徴収に係る所得税や復興特別所得税を徴収して国に納付する義務のある者を「源泉徴収義務者」といいます。源泉徴収の対象とされている所得の支払者は、それが会社や協同組合である場合はもちろん、学校、官公庁であっても、また、個人や人格のない社団・財団であっても、全て源泉徴収義務者となります(所法6、復興財確法8②)。
 ただし、常時2人以下の家事使用人のみに対して給与の支払をする個人は、その支払う給与や退職手当について源泉徴収は要しないこととされています(所法184、200)。
 また、給与所得について源泉徴収義務を有する個人以外の個人が支払う弁護士報酬などの報酬・料金等については、源泉徴収を要しないこととされています(所法204②二)。
Ⅲ 源泉所得税及び復興特別所得税の納税地
1 納税地
 源泉徴収義務者が源泉徴収した所得税は、その納税地の所轄税務署に納付することになります。この場合の納税地は、次の2に掲げる所得に対するものを除き、源泉徴収の対象とされている所得の支払事務を取り扱う事務所や事業所等のその支払の日における所在地とされています(所法17)。
 したがって、例えば、本店の使用人等に対する給与の支払事務はその本店で取り扱い、支店の使用人等に対する給与の支払事務はその支店で取り扱っている場合には、その支払事務を取り扱っている本店や支店のそれぞれの所在地が、その支払う給与に対する源泉所得税の納税地であり、その所轄税務署に源泉所得税を納付することになります。
 なお、その支払事務を取り扱う事務所や事業所等の移転があった場合には、移転前の支払に対する源泉所得税の納税地は、移転の届出書に記載すべき移転後の事務所等の所在地とされています(所法17、所令55①)。
 また、源泉徴収に係る復興特別所得税の納税地は、源泉所得税の納税地とされていますので、源泉徴収した復興特別所得税はその納税地の所轄税務署に源泉所得税と併せて納付することになります(復興財確法11②)。
2 納税地の特例
 次に掲げる所得に対する源泉所得税及び復興特別所得税については、それぞれ次に掲げる所在地が、その納税地となります(所法17、所令55②、措令2の2④、3の2の2④、4③、4の5③、4の6の2③、25の10の11⑦、26の10②、26の17⑩⑪、26の32①)。
 なお、次に掲げる所在地の移転があった場合には、移転前の支払に対する源泉所得税の納税地は、移転の届出書に記載すべき移転後の次に掲げる所在地とされています(所法17、所令55②)。
 ⑴ 国債の利子……日本銀行の本店の所在地
 ⑵ 地方公共団体又は内国法人の発行する債券の利子……その地方公共団体の主たる事務所又は内国法人の本店若しくは主たる事務所の所在地
 ⑶ 内国法人(所得税法第6条の3第1号の規定により内国法人とされる同条に規定する受託法人を含みます。)の支払う所得税法第24条第1項に規定する剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配等……その内国法人の本店又は主たる事務所の所在地
 ⑷ 所得税法第17条に規定する受託法人の支払う法人課税信託の収益の分配……その法人課税信託の受託者の次の区分に応じそれぞれ次の場所
  イ 個人 その者の国内にある事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地(これらが二以上ある場合には、主たるものの所在地)
  ロ 内国法人 その内国法人の本店又は主たる事務所の所在地
  ハ 外国法人 その外国法人の国内にある主たる事務所の所在地
 ⑸ 投資信託(委託者指図型のものに限ります。)の収益の分配(⑷の収益の分配に該当するものを除きます。)……その信託の受託者である信託会社の本店又は主たる事務所の所在地(その信託会社が外国法人である場合には、その信託会社の国内にある主たる事務所の所在地)
 ⑹ 特定受益証券発行信託の収益の分配……その信託の受託者である法人の本店又は主たる事務所の所在地(その法人が、外国法人である場合は、その法人の国内にある主たる事務所の所在地)
 ⑺ 国外において支払われる国内源泉所得のうち、組合契約事業から生ずる利益の配分、土地等の譲渡による対価、人的役務の提供事業の対価、不動産の貸付け等による対価、貸付金の利子、工業所有権等の使用料又はその譲渡の対価、給与その他人的役務の提供に対する報酬・公的年金等・退職手当等、事業の広告宣伝のための賞金、保険業法に規定する生命保険会社・損害保険会社等と締結した保険契約等に基づく年金、定期積金の給付補塡金等及び匿名組合契約等に基づく利益の分配……その国内源泉所得の支払者の国内にある事務所等の所在地
  ただし、租税条約の規定により租税が免除される免税芸能法人等が、国外において支払う芸能人等の役務提供報酬については、免税芸能法人等に対し芸能人等の役務提供の対価を支払う者の国内にある事務所等の所在地
 ⑻ 外国法人の発行する債券の利子のうちその外国法人の恒久的施設を通じて行う事業に係るもの……その外国法人の国内にある主たる事務所の所在地
 ⑼ 役員に対する賞与でその支払確定後1年を経過した日までに支払がないため、同日において支払があったとみなされるもの……同日においてその支払をするとしたならば、その支払事務を取り扱うと認められるその支払者の事務所等の所在地
 ⑽ 国外公社債等の利子等、国外投資信託等の配当等及び国外株式の配当等……国内の支払の取扱者のその支払事務を取り扱う事務所や事業所等の所在地
 ⑾ 外国法人が発行した民間国外債の利子……その外国法人の国内にある主たる事務所の所在地
 ⑿ 上場株式等の配当等(租税特別措置法第9条の3の2第1項に規定するもの)……国内の支払の取扱者のその支払事務を取り扱う事務所や事業所等の所在地
 ⒀ 特定口座内保管上場株式等の譲渡による所得等……上場株式等の譲渡の対価等の支払をする金融商品取引業者等の営業所の所在地
 ⒁ 割引債の償還差益及び割引債の償還金に係る差益金額……割引債の発行者の本店又は主たる事務所の所在地(その割引債が、国債である場合には日本銀行の本店の所在地、外国法人が発行したものである場合にはその外国法人の国内にある主たる事務所の所在地)。ただし、割引債の償還金に係る差益金額について、特定割引債取扱者又は国外割引債取扱者が償還金を交付する場合には、原則として、その交付事務を取り扱う事務所や事業所等の所在地
3 納税地に関する届出
 ⑴ 「給与支払事務所等の開設届出書」の提出
 給与の支払者は、次に掲げる事実が生じた場合には、その事実が生じた日から1か月以内に「給与支払事務所等の開設届出書」を、その給与支払事務所等の所在地の所轄税務署長に提出することになっています(所法230、所規99)。
 イ 新たに給与の支払事務を取り扱う事務所等を設けたこと(例えば、法人の設立、支店や営業所の開設等)。
 ロ 支店、営業所等で新たに給与の支払事務を取り扱うこととなったこと。
 (注)個人が新たに事業を始めたり、事業を行うための事務所などを設けたりした場合には、別に「個人事業の開業等届出書」を所轄税務署長に提出することになっていますので(所法229)、「給与支払事務所等の開設届出書」を提出する必要はありません(所法230)。
 ⑵ 「給与支払事務所等の移転(廃止)届出書」の提出 給与の支払者は、次に掲げる事実が生じた場合には、その事実が生じた日から1か月以内に「給与支払事務所等の移転(廃止)届出書」を、その給与支払事務所等の所在地の所轄税務署長に提出することになっています(所法230、所規99)。
 イ 解散や廃業、休業等により給与の支払がなくなったこと。
 ロ 支店や営業所等での給与の支払事務が本店や主たる事務所等へ引き継がれたこと。
 ハ 給与の支払事務を取り扱う事務所等を移転したこと。
 (注)給与の支払事務を取り扱う事務所等を移転した場合には、移転前の納税地の所轄税務署長にこの届出書を提出することになっています(所規99)。また、個人の事業者が事業を行う事務所等を移転したり廃止した場合には、「個人事業の廃業等届出書」を所轄税務署長に提出することになっていますので(所法229)、「給与支払事務所等の移転(廃止)届出書」を提出する必要はありません(所法230)。

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